大規模コミュニケーション(本年度計画と実施概要)

「平成21年度大規模コミュニケーション」について

 農林水産省では、「遺伝子組換え農作物に関するコミュニケーション」を平成21年9月16日(月曜日)に新潟県新潟市(朱鷺メッセ:新潟コンベンションセンター)において開催しました。また、平成21年11月18日(水曜日)には大阪府大阪市(大阪国際会議場(グランキューブ大阪))において第2回目を開催いたしました。
 大阪府大阪市及び新潟県新潟市の実施概要は以下の通りです。

●「遺伝子組換え農作物に関するコミュニケーション(大阪会場)」の概要

  1.日 時:平成21年11月18日(水曜日)  13:30〜16:30
  2.場 所:大阪国際会議場(グランキューブ大阪)12階 特別会議場
  3.出席者:
      コーディネーター:唐木 英明  日本学術会議副会長
      パネリスト:消費者団体1名、食品流通団体1名、学識者2名、報道関係者1名
      伊藤 潤子  生活協同組合コープこうべ参与
      大島 正弘  (独)農研機構 作物研究所稲遺伝子技術研究チーム長
      小島 正美  毎日新聞社東京本社生活家庭部編集委員
      前田 けい子 なにわの消費者団体連絡会幹事
      三石 誠司  宮城大学 食産業学部フードビジネス学科教授
      オブザーバー:農林水産省、内閣府食品安全委員会、厚生労働省、環境省
      一般参加者:消費者、生産者、流通業者、マスコミ関係者など176名
  4.議事の進め方:
       農林水産省 農林水産技術会議事務局技術政策課瀬川技術安全室長からの 情報提供、学識者からのGM基本技術及びGMOをめぐる状況の解説、報  道関係者からのコメントの後、コーディネーターの司会進行によりパネル  ディスカッション、その後、会場との意見交換を実施。パネリスト間の活発 な意見交換が行われ、また会場からも様々な立場からの意見が出された。
 なお、休憩時間にDNA抽出実験のデモンストレーションが行われ、また、 一般参加者を対象に「遺伝子組換え農作物に関するコミュニケーションの アンケート調査」を実施した。
  5.主な発言の趣旨(○:パネリスト、オブザーバー、●:参加者)
    (1) 遺伝子組換え農作物への不安の実体を考える
    本日のテーマの1つとして『不安』があり、ドイツのフロイトは『私たちは正体が分かっているものには恐怖を感じるが、正体の分からないものには不安を感じる』と言っている。人は不安感は我々にとっても今でも一番の大きなストレスになる。遺伝子組換えなど正体が分からないと不安に思い、不安なものは危険と思いがちで、危険と判断するとそれが先入観になり、なかなか変わらないという性格がある。今回はその不安が少しでも解消できるよう討論を進めたい。
    日本の植物遺伝子組換え研究は高いレベルにあるが、実用化の研究は少なく、基礎研究に向かっている。研究者にとってつらいことは研究をやっても実用的に役立たないことであり、本シンポジウムではこの状況を変えて世界に立ち向かえる契機になって欲しい。
    アメリカで栽培している害虫抵抗性遺伝子組換えトウモロコシ中のBtタンパクは、有機栽培ではキュウイに直接散布され、同じ成分なのに、Btトウモロコシのみが懸念されているのは、有機栽培に使われていることを知らないからであろう。家畜は遺伝子組換え飼料を毎日食べていて、ヒトはその肉を10年以上も食べ続けて、何も害がないのは何も問題となることがないわけである。正しい情報の提供が何よりも肝要だ。
    これまでは遺伝子組換えは危険かなと思っていたが、大事なことは正しい情報を共有して、皆さんに啓発することだろうと思う。
    遺伝子組換え食品を食べて危険だという情報はないが、除草剤耐性雑草の発生と繁殖など環境に対する影響は十分検討が必要と思う。
    同種の除草剤を使い続けると抵抗性の雑草が生じるのは、農業の世界では普通のことで、遺伝子組換えに限らない。作用の異なる除草剤を組み合わせて使うことにより、抵抗性の雑草は駆除できる。なお、除草剤耐性ナタネのこぼれ種子の環境への影響はモニタリングにより、耐性ナタネが他の植物と交雑しても、その雑種が優位になり他の種がなくならないかを監視している。
    除草剤耐性ダイズと野生種のツルマメでは、ごく低頻度の交雑は起きるが、交雑した雑種が広がるという知見はないようだ。人間が人工的に作り出した作物は手入れが必要であり、自然界では虚弱過ぎて、決して優位にはならないようだ。
    (2) 正確な理解と合意点の形成について
    遺伝子組換えが世に受け入れられない理由の1つは、消費者にメリットがないことだが、これがないと困るという事例はないか。
    第1世代の遺伝子組換え農作物はアメリカの農家が1番メリットがあったが、第2,3世代では花粉症緩和米や高機能性米など消費者に役立つ作物が出てきている。
    遺伝子組換え農作物の最大のメリットは、我々が一定レベルの生活を普通に行えていることで、もし遺伝子組換え農作物がなくなれば、昭和20年頃の生活に戻らざるを得なくなる。我々は日々の生活では遺伝子組換え農作物から大きな恩恵を受けているのではないか。
    世界のダイズは半分以上が遺伝子組換え農作物になり、その恩恵がなぜ我々に見えないのかは、それが精製された油になり、表示もないので遺伝子組換え農作物を利用している実感がないのであろう。
    アメリカの農業地帯では、非組換えのトウモロコシ畑では有機リン系の除草剤が使われ、一方、遺伝子組換えトウモロコシ畑では有機リン系の除草剤散布は必要ないので、生産者と消費者にともにメリットがあるようだ。
    遺伝子組換え農作物の承認では、消費者が望んでできた機関である食品安全委員会に委ねられ、安全が評価され不安を解消するという、進歩した民主主義国のあるべき姿を示していると思う。
    遺伝子組換え農作物に反対するにしても、個人と国家レベルの論議を分けて、個人的には反対でも、遺伝子組換え農作物を栽培している農家がある場合、どのくらい良い物かを見守る心構えが必要だ。それが本当に良ければ未来につながり、将来我々の命を救ってくれるだろう。
    遺伝子組換えに対する企業の立場も問われるだろう。企業は非遺伝子組換えを市場売り上げの手段として使った面は否定できないが、今後はどのような戦略を採るべきであろうか。
    (3) 一般からの意見、質問
    連載記事を見て、1品種のトウモロコシに遺伝子を3つ入れた農作物が既にアメリカから輸入されている。8つの遺伝子を入れた農作物もあると聞くが、それは何のためか。
    モンサント社のトウモロコシの安全性について、各国で疑問視するデータや知見が報告され、危惧している。安全審査は開発メーカーが提出したデータだけで審査しているのは納得がいかない。どう考えればよいか。
    除草剤の主成分グリホサートは子供の脳にも影響があるというデータが多々入ってきて、不安になることも考えていただきたい。
    (4) 総括
     大阪には、なにわの伝統野菜やエコ農産物があるというお話を伺った。遺伝子組換えを推進する人は、なにわの伝統野菜などを決して否定するのではなく、共存していくということがまさに大事なのである。つまり、何か1つに、一色に染めるのではなくて、安全性が確認されればお互いに認め合って、嫌であれば食べない、好きな人は食べてもいいという共存の世界をつくるのが一番いいのではないかと思っている。
 そのためには、例えば遺伝子組換えが5%も混入しているというのは、やはりちょっと嫌かなと。そうすると、それが実際に合意できるのはどの位なのかを考えながら、5%ルールを変えることも視野に入れなくてはいけないのではないかと思う。
    別  紙: コーディネーターとパネリストの御紹介[PDF:101KB]
    配付資料:

遺伝子組換え農作物に関するコミュニケーション
− 世界の潮流から日本の食料と技術を考える − [PDF:14,566KB]

    会場風景:

会場の様子
コーディネーター:唐木英明先生

パネラー
パネリスト

パネルディスカッションの様子
情報提供に聞き入る参加者

DNA実験
DNA抽出実験

意見交換の様子
参加者との情報交換

遺伝子組換えカーネーションの装飾花
遺伝子組換えの青いバラ

会場の朱鷺メッセ
青いカーネーションを挿した壺花

朱鷺メッセの遠景
会場の遠景:大阪国際会議場




●「遺伝子組換え農作物に関するコミュニケーション(新潟会場)」の概要

  1.日 時:平成21年9月16日(水)13:30〜16:30
  2.場 所:朱鷺メッセ:新潟コンベンションセンター マリンホール(国際会議室)
  3.出席者:
      コーディネーター:北野 大  明治大学理工学部教授
      パネリスト:消費者団体1名、生産者2名、製造業者1名、学識者3名、報道関係者1名
      赤塚 昌一  佐藤食品工業(株)開発部長
      漆間 平   漆間ファーム代表
      小島 正美  毎日新聞社生活家庭部編集委員
      相馬 政春  JA北越後畜産部会長
      多賀 昌樹  (社)新潟県栄養士会生涯学習委員
      田部井 豊  (独)農業生物資源研究所遺伝子組換え研究推進室長
      長谷川かよ子 (NPO法人)新潟県消費者協会会長
      三石 誠司  宮城大学食産業学部フードビジネス学科教授
      オブザーバー:食品安全委員会、環境省、農林水産省
      一般参加者:消費者、生産者、流通業者、マスコミ関係者など131名
  4.議事の進め方:
      農林水産省 農林水産技術会議事務局技術政策課瀬川技術安全室長からの情報提供、学識者からの基本技術及びGMOをめぐる状況の解説、報道関係者からのコメントの後、コーディネーターの司会進行によりパネルディスカッション、その後、会場との意見交換を実施。パネリスト間の活発な意見交換が行われ、また会場からも様々な立場からの意見が出された。
なお、休憩時間にDNA抽出実験のデモンストレーションが行われ、また、一般参加者を対象に「遺伝子組換え農作物に関するコミュニケーションのアンケート調査」を実施した。
  5.主な発言の趣旨(○:パネリスト、オブザーバー、●:参加者)
    (1) 各分野からの遺伝子組換え農作物の問題点を考える。
    遺伝子組換え技術の開発は1970年代に巨大企業(モンサント社)が巨額の予算を20年以上にわたり投じてきて、1996年から事業展開を始めたが、日本はこれに対応できるか。
    モンサント社に比べて日本の基礎研究は遅れてはいないし、世界のトップランナーの1人である。しかし、開発研究が商品化へ進展する間のギャップがあって、商品化に至っていないことが問題である。これからは、メジャーな作物は民間で担当し、マイナーな作物の研究では農水省で対応するなど考えられる。
    畜産業の飼料については、BSE発生時には、安全・安心の飼料を何よりも考えていた。安全な飼料ということで非遺伝子組換えを求めてきたが、価格が高騰して困難となった。遺伝子組換え飼料の使用については消費者の理解を得ながら考えていきたい。
    養豚では、飼料の100%が海外からの輸入品で、昨年10月から生産費割れの状態が続いている。非遺伝子組換えの高価な飼料を使った畜産物が消費者の理解を得られるか。
    加工食品メーカーの立場として、遺伝子組換えについては安全性が十分担保されないと消費者が敏感に反応するので、慎重にならざるを得ない。将来とも遺伝子組換えの安全性が確保されなければ使えない。
    消費者協会の立場から、遺伝子組換えは不安と感じている。科学的に安全だと保証されていないように思える。安全審査のデータは会社側に任せて良いものか。
    学生対象のアンケート結果では、遺伝子組換えの情報が少なく、実態や安全性については分かっていない状況にあるので、このコミュニケーション事業は情報提供の面で大変意義がある。
    管理栄養士の中では、遺伝子組換えの扱いが分からない。遺伝子組換えを食べてもどのように体内で代謝されるのか分かっていない。機能性の遺伝子組換え食品は栄養上良いことかもしれない。「遺伝子組換えでない」と言う表示は逆に遺伝子組換えは危ないのかというイメージを抱かせるので問題。
    表示は消費者が製品を選択する時に重要な指標となるので、分かり易くする必要がある。遺伝子組換え混入率5%までは表示義務なしとなっているが、EUでは0.9%であり、わが国でも足並みをそろえてほしい。
    消費者の立場からは、遺伝子組換えの情報は透明性を高めて欲しいし、考える余地も残しておいてほしい。一番心配なことは、知らないうちに食べさせられていたと言うこと。
    (2) 正確な理解と合意点の形成について
    情報を取るにはある程度の努力が必要、何も知らないわからないでは、進歩が無くなる。殺虫性遺伝子組換え作物は、特定の昆虫に害作用があるものの、人畜には何の作用もない。これは食品安全委員会では安全性が評価されている。
    遺伝子組換え食品の安全性は未知のタンパク質がなければ、アレルゲンにならないと考えている。個人的意見としては、遺伝子組換え食品の場合は十分に評価されていると思う。トウモロコシの場合はBt(殺虫タンパク質)を作物に使わないと害虫の食害にあい、カビ発生による発癌物質が生じ易くなり、むしろそちらの方が懸念される。遺伝子組換えは未知と言うだけで、拒否するのはいかがなものか。
    知らない、分からないから不安、だから拒否するというのは、遺伝子組換えの実際内容が分からないことからの不安ではないか。このような日本のスタンスでよいのか。
    未知だから知らない、だから拒否と言うだけでなく、新たな情報を知らされる機会を作ってもらいたいし、いろんな立場の人が加わり、皆の問題として考えていきたい。消費者だけが置いてけぼりではなく、共に考えていくことが大事と考えている。
    日本は、遺伝子組換え作物の輸入だけで国内で技術ができなくて良いのかとの疑問があった。決して良いわけではない。モンサント社の研究費が年額1,100億円、農水省の独立行政法人の運営費が1,200〜1,300億円で同じ予算レベルで競争していて、頑張っている状況にある。
    わが国の遺伝子組換え受け入れの現状をどのように打開するのかとの問いに対して、今日の講演の中で「共存」という言葉が出てきたが、お互いが少しずつ我慢をするという状況が大事である。正確な情報提供は風評を起こさないための布石として不可欠である。新しい遺伝子組換え作物を試したいという農家も多い(40-50%)中で、栽培の申請手続きができるように、地方の規制に任せるのではなく農水省で全国対応で制定する必要がある。
    消費者としては、遺伝子組換え食品の安全性の専門的評価を十数年もかかる場合にも、情報の公開と透明化を科学に求めたい。社会の判断として、消費者の発言が良い方向に向かうのではないか。
    遺伝子組換えについて日本の中で世界の情報を見ながら共存してやって行く道を捜していく。世界の動きをよく見て日本も考えていくと前向きの検討ができると思う。
    (3) 一般からの意見、質問
    新潟ではコシヒカリと遺伝子組換えイネとを栽培すると交雑が心配になるので、国が統一したガイドラインを作る必要性があるのではないか。
    一般の人を対象に遺伝子組換え食品の安全と安心を持ってもらうためには、情報が少ないのでリスクコミュニケーションを含む教育の場を持つことが大事だと思う。
    遺伝子組換え技術や分析技術の進歩によって、8遺伝子を組換えたスタック品種が出現し、遺伝子組換え混入率5%をどのように保持することになっているのか。
    パネル討議の中で遺伝子組換え育種技術に対して否定的なニュアンスで受け取られたパネリストがいたが、それでは従来の品種改良も駄目なのかどうかをお聞きしたい。
    (4) 総括
    現在、遺伝子組換え作物に不安を持っている人が多いようだが、知らない、分からない、不安、だから拒否というパターンが多い。この場では強制するのではなく、正確な情報を良く理解してほしい。そして自分で判断できるようにしてもらうことが重要だ。
次に、共存ということ。遺伝子組換え作物を栽培してみたいという農家の人もいたり、遺伝子組換え食品でも良いという消費者もいたりするので、自分がいやだから遺伝子組換え作物を拒否するのではなく、遺伝子組換えを良く理解した上で、共存することが大事である。そのためには、試験をしたり安全を確認したりするために要するルール作りをする必要がある。
遺伝子組換え技術は、従来の品種改良ではできない機能性の付与や耕作不適地での作物の栽培を可能にすることが期待されている。ある技術を評価する場合には、現在のメリットで判断するのではなく、次の世代でどうなるかを考えて判断することが肝要である。その意味でもこのようなコミュニケーションの機会は有意義である。
    別  紙: コーディネーターとパネリストの御紹介[PDF:412KB]
    配付資料:

遺伝子組換え農作物に関するコミュニケーション
− 「食料」と「技術」の未来を考える − [PDF:5,748KB]

    会場風景:

会場の様子
会場の様子

パネラー
パネラー

パネルディスカッションの様子
パネルディスカッションの様子

DNA実験
DNA実験

意見交換の様子
意見交換の様子

遺伝子組換えカーネーションの装飾花
遺伝子組換えカーネーションの装飾花

会場の朱鷺メッセ
会場の朱鷺メッセ

朱鷺メッセの遠景
朱鷺メッセの遠景